「えー、知っている者も多いだろうが、昨日、夜中まで麗蘭街にいて補導された生徒がいる」
「「………」」
「皆、未成年だけでは絶対に行ってはいけない場所だと何度も言われてきているはずだ。麗蘭街はきわめて危険な街であるから、絶対に行かないように」
「「はぁーい」」
担任の言葉に先頭を切って返事をしたのは、さっきひときわ目立つ声で話していた女子たちだった。
…行かないなんて選択肢、ハナから持ち合わせてないくせに。
担任も担任で、返事はその場しのぎであることはどうせ分かっているはず。
それでも止めない。止めるほど親しくなんかないし、…何よりあの街に行ったらすべてが自己責任になる。
黒にまみれた街に、自らの意志で足を踏み入れるのなら
あとはもう、自らの意志で還って来るしかない。
他人が背負えるほどあたたかくも優しくもない、それが麗蘭街なのだから。
――…ガラガラッ