皆が席に着く中、“彼の席”を見てみると今日は空席になっている。
…ということは、今日は。
ピンポンパンポーン――…
『みなさん、おはようございます。本日は4月15日、水曜日、天気予報は晴れとなっています』
「わっ!今日御堂くん!」
「朝から声聞聴けるなんてラッキー!」
「そこ、静かに」
「「すみませーん」」
『本日の予定は特にありません。1年生は学校の雰囲気に慣れてきた頃でしょうか』
女子たちが嬉々として声を上げるのも無理はない。
現に周りではうっとりしながら聴いているクラスメイトばかりだし、男子たちも彼が一目置かれる存在だと知っているからこそ感心しきりなのである。
――…何もかもを包み込むかのような、穏やかで深みのある声。
なめらかで聞き取りやすい中で、時折絢爛に映えるような低音が彼を男性なのだと実感させながら
その声はいつも優しさに満ちていて、声だけで人々の微笑みを誘う。
『――…以上、本日の朝の放送は2年・御堂紫苑が担当いたしました。皆さん、良い一日をお過ごしください――…』
一日の始まりに、声という華を添える“彼”。
…今日も今日とて人気者だなぁと、さほど面識もないくせに身を案じてしまったほどだった。