◇
「疲れたろ、ごめんな」
「ううん、大丈夫。次は総会?だっけ」
「そう。朱里の紹介を兼ねて」
「なにそれ緊張する…」
陽が落ちかけた夕空と、三日月。
数時間しか経っていないのに、外の空気を吸えたことに感動すら覚える。
「…支配人様、驚いたよな」
「今まで感じたことのない恐怖は感じた…。…でも、織原さんと木島市長が帰った後はすごく穏やかで優しくて」
「っ、」
「本当は優しい人なのかな、そうだったらいいなって、思ったよ」
そう。織原さんと木島市長が帰ったあと、まるで別人のように優しかったのだ。
…わたしが金銭的援助を受けていないからか。はたまた初対面だからか。いろんな疑問がわくけれど。
「朱里」
「ん、……っ!?」
「…キスしたくなった」
「っ街中ではダメ…!」
「ふーん、じゃあ家だったらいいんだ」
「……うん」
「…おまえなんでそこ素直なの…」
左目にカラコンをした紫月の艶やかな金髪が、風に靡いて心地よさそうに見えた。