それから少しして、後ろから柔らかな声が届く。
「紫月さん…!」
「朱里、連絡できなくて…心細かったよね。本当にごめん」
「大丈夫です。無事ならそれでいいんです」
彼は正装をしていた。
…それはきっと、これから会う人たちに失礼が無いようにということ。
「真柊、柚葉、ありがとう。あとはこっちで」
「何かあったら呼んでネ。愁世と合流してくるヨ」
「お、お兄ちゃんっ」
「…、」
「がんばれ…っ!」
――…紫月さんの部屋で、彼女と紫月さんと3人になった日
柚葉ちゃんは紫月さんに怯えているようだったし、紫月さんもまた威圧的だった。
今もそれは確かに感じる。
…この兄妹にしか分からない溝が、確かにあるのだとは思うけれど、
「…いつもありがとう、柚葉」
「っ…!うん…。…うんっ…!!!」
この兄妹にしか分からない絆も、確かにあるのだと…思った。