「久米ちゃん…、どうしてここに…?」
「このクラスのヤツに、教科書借りて返したんだよ。戻ろうとしたら醜い女がおみずに刃向かってたからよ」
「………」
「その顔じゃ行ったみてーだな?あの街」
「…一応配慮はしてくれるんだ」
「そりゃあ不特定多数の前だぜ?俺だってアホじゃねぇ」
やっぱり豪快に笑う久米ちゃん。…声がデカい。身体もデカい。
それでも麗蘭街という単語を出さないあたり、彼もまたあの街に精通していることがよく分かる。
「…久米ちゃん、聞きたいことがあるの。放課後時間ある?」
「おうよ。俺もおみずに言っておきたいことがある。旧棟の談話室はどうだ?スペアキー持ってんぜ」
「……さすがすぎるよ久米ちゃん」
「褒め言葉ありがとよっ!」
彼にしては、周りに聞こえない小さい声で話してくれただけで進歩だと思うのだけど
やっぱり最後にはボリューム大に戻ってしまった。…ほんと久米ちゃんらしい。
(…よし。)
もうじき5月。
月末の金曜日までは、あと数日となっていた。