「どうしたの?……って、あぁ」
ファイルから出てしまった中身は、七夕の短冊みたいな縦長の紙だった。
それらをすぐに拾い集めながら文言を見てしまったわたしを、彼が見逃すわけがなかった。
――…『みんなが仲良くなれる世界』
――…『誰にでも平等な明日』
――…『大切な人たちが笑っていること』
字の癖も、大きさもそれぞれ違う。一枚ずついろんな人が書いているようだ。
共通して感じ取ったのは、短い言葉の中にありったけの想いが詰まっていることで。
「朱里」
「はい、」
「動かないでね」
言葉が出ず、ファイルを机にそっと戻そうとすると
わたしの後ろに立った紫月さんが、首にネックレスをかけてくれた。
「…麗蘭街の住人は、“願い”を持ってる」
「…願い…」
「そう。それは昔、同志たちと書いた願い」
首元に吐息が触れ、彼の腕に包まれる。
紫月さんはわたしの存在を確かめているようだった。…ここにいるよと声にしても、きっと彼は確かめるのをやめないだろうと思うくらいに、強い力だった。
「…俺の、御守りみたいなもの」