「…麗蘭街の創設者、ですか…」
「うん。彼を知ってる昔の人は、“街を買った男”って呼ぶ。もう亡くなってるけどね」
街を自らで切拓し、現在まで残してきた創設者。
…なんだかすごい話を聞いていると思う。そして、その創設者から何代後なのかは分からないけど伝統を継いでいる紫月さんも…すごい人だ。
「あと、俺の左目。…生まれつきの虹彩異色症っていうもので、視力は左の方が弱いけど特に困ってない」
そして彼はゆっくりと
左目のカラコンをはずして
あの日、わたしが見たすみれ色の瞳があらわになった。
「この状態で外に出たら必ずなんか言われるから、普段は隠してる。嫌な思いもたくさんしたしね…」
遠くを見つめた彼の虹彩は、とてもきれいだ。
…けれど“みんなと同じが普通”と言われがちなこの国。両目の色が違う彼は、カラコンをするまではきっと苦労してきたのだろう。
「…だから、麗蘭街に伝わる伝説も間違いではない。事実、俺は数百人を取り仕切って摩天楼の頂に住んで、目がすみれ色なわけだ」
「………」
「朱里。…それでも俺を愛してくれるなら、俺は」
「っ、」
「貴女を最期まで愛すると、誓うよ」