「…ただ、噂されてるような良くないこともほとんど事実。政治家とか芸能人、金にものを言わせてる人間の密会もザラ。報道関係でも麗蘭街のことは載せない暗黙のルールがある。他人を助けるだなんて温情も見せれば、この街に似合わないって理由で次にはターゲットだ」

「じゃあ、さっき柚葉ちゃんを助けたわたしは…」

「…うん、本来は危ない目に遭っていた。麗蘭街に住んだり労働するには、そういう危険性と人としての情を捨てる誓約書を書かせる。その代わり、月額の給料だって未成年だろうが破格でね。人を十分養っていける金額」

「あの新人の子は…そういう意味では適応しようとしていたんですかね…?」

「朱里はふざけんなって思っただろうけど、それは正解。そして彼の対応もある意味正解」



紫月さんの落ち着いた声色に、わたしもつとめて冷静でいようと心がける。

徐々に明らかになる麗蘭街の秘密。

…それを教えてくれて、知った上で彼女になるか選んでいいと言った紫月さん。



「…未成年と成人の線引きがはっきりしているのは、未来ある若者の非行根絶のためと、明確な区別をもって互いに生きやすくするため。…要は聞こえのいい昔からの風習。麗蘭街創設者の願いでもある」