その甘ったるさを含んだ声の残響は
わたしの脳にへばりついて、離れようとしない。
「……。何かあってからじゃ遅いんだよ…?あの街は、」
「分かってる!でもだからって行かない理由にはならないよっ」
「……っ…」
「ねぇ朱里、うちら友達でしょ…?」
莉菜の目に確かな眼光が宿った気がしてならなかった。
…とどめだと言うかのようなその言葉を、上手く咀嚼する能力は今のわたしに備わっていない。
「……分かった…」
「ありがとうっ!朱里だーいすきっ!」
そうして抱き着いてきた莉菜の体温が、あたたかいのかつめたいのかすら分からなくて。
――…嫌われたくない。
暗示のごとく、幾度となく自らを縛り付けてきたその感情は
どこを彷徨ったって最後には必ず戻ってくる。
平凡だろうと、脆く在ろうと、手に入れた居場所を壊したくないと思ってしまう。
…莉菜の腕に包まれた中で、一度そっと目を閉じる。
心のどこかに嘲笑う自分が居る事実を、今日もまたもみ消した。