「っ、」
だから、その声が降るように落ちてきたとき
わたしは目を見開いて固まってしまうくらいには驚いていた。
深みと甘美さと、少しの妖しさが伴った声は
さっきまで女子グループを魅了していたはずなのに、いつの間にかわたしと男子の近くに在る。
「え!?…っごめん水城さん!おれ、名前間違うとかっ」
「ぜっ、全然…!気にしてないのでっ」
「佑介、第一印象って大事だよ?」
「分かってるっつーのっ!水城さんマジでごめんな…?」
御堂くんに茶化され少し顔を赤らめた彼は、佑介くんと言うらしい。
…一年生の時違うクラスだったから詳しいことは存じ上げないけれど、顔は何度も見たことがある。
多分、大体いつも御堂くんと一緒に居る人…だったような気がする。
廊下でお話をしていたり、お昼を一緒に食べているのもよく見かけたし。
黒髪の御堂くんとは対照的な、明るいキャラメルブラウンの髪が
彼の明るそうな性格をよく表しているようだった。