それから私たちは、毎日のようにいっしょに帰るようになった。

 先に教室を出た彼が、靴箱のところで、決まって私を待っているのだ。

「情けねー話」をぶちまけたせいなのか。
 どこかふっきれたように、東くんは生き生きとふるまうようになった。

 そして、私も。

 東くんの意外な姿を見たことで、かえって彼が近くなった気がして。へんにかしこまらずに、自然に話ができるようになっていた。

 接点なんかないと思っていた私たちだけど、同じお笑いコンビのファンだということが発覚したり、私も彼も肉より魚が好きだとわかったり。
 小さな共通点が、つぎつぎに見つかっていった。

「水族館に行って魚の群れを見るとね、きれいって思うよりも、つい、おいしそうだなって思っちゃって」

「俺も俺も!」 

 東くんはにかっと歯を見せて笑った。

 お日さまのような、輝く笑顔。
 彼はうちのクラスの太陽。
 これがほんとうの東くん。

 まぶしくて、なぜか、すこしだけさびしくて。

 うつむいていたら、東くんは、「そうだ!」と、大きな声をあげた。

「清水さん。今度の日曜、水族館に行かない? うまそうな魚を見ようよ」

「えっ……。う、うん」

 反射的にうなずいてしまった。

「やった!」

 小さい子みたいに、はしゃいだ声をあげる東くん。

 この調子なら、もう「失敗」はしないよね。そうしたら、彼にも自信がついて、ほかの女の子とだってこの先うまくやれるようになるかもしれないんだ。

 そのために、私も力になってあげなきゃ。