東瑛太くんはクラスの太陽だ。いつもさんさんと明るい。
 すこぶる陽気で、休み時間は常にたくさんの友達に囲まれている。
 今だってそう。
 目立つグループの男子たちにまじってお弁当を食べている彼のもとに、クラスのきれいどころの女子たちが寄ってきて、何やら盛り上がっている。

「たしかに顔はいいけどね」

 美樹が、お弁当のウインナーをつつきながら、そうこぼした。美樹は東くんと同じ中学出身だ。

「もてるし。東って中学の頃、言い寄ってくる子とつきあっては別れ、つきあっては別れ、って繰り返してたんだよ。うちらにとっては別世界の話って感じだよね」

「ふうん……」

 私は、もぞもぞと自分のお弁当を食べ進めた。

「で? 東がどうしたわけ?」

「う。ううん、何でもない」

 美樹も私も、もっさり垢抜けなくて、気づいた時にはクラスの最底辺。

 天上界にいるがごときキラキラ男子たちも、キラキラ女子たちも、陰で私たちのことをバカにしまくっているにちがいないのである。

 だからやっぱり、あの告白は、なにかの手違い。

 高熱に浮かされて意味不明な行動をとってしまったとか、あやしい催眠術で操られたとか。
 罰ゲームの線だって消えたわけじゃない。

 告白のあとの、罰ゲームですか? という私の問いを、東君はすぐさま否定した。

「えっ? なっ、何言ってるの? ちがうよ?」
 って。

 だけど……。

 私の警戒心を解くための演技かもしれない。
「つきあって本気にさせたところでこっぴどく振る」というところまで含めてのゲームなのかもしれない。

 そう思って、彼の「告白」を、私は丁重にお断りした。

 ……はずだったのだけど。