「すみません。よく聞き取れなかったので、も、もう一度、言ってくれますか」

 私は制服のスカートの生地をぎゅっとにぎりしめていた。手の中にも、背中にも、へんな汗をかいている。

「だっ。だからっ。清水さんのことが好きだから、つきあってくれって言ってんの!」

 東くんは声を張り上げると、赤い顔して、私から目をそらした。

 聞き間違いじゃなかった。たしかに、好きだって……。言った。

 ありえない。東くんみたいな目立つグループの男子が、私のような、真面目だけがとりえの、日陰の底辺女子を好きになるなんてありえない。
 聞き間違えでないとするならば。もしや。この告白は。

「ば、罰ゲームですか?」

 そうだ。罰ゲームに決まってる。仲間たちに嫌々言わされてるんだ。

 東くんは、その大きな瞳を、ぱちくりとしばたたいた。そして。

「…………え?」

 と。すっとんきょうな声を漏らしたのだった。