『あそこの席すごいね』とか『かわいそう』だとか。
一体誰がかわいそうなのだろう。

もし悠くんに対しての同情なら、私の身が危うくなる気がする。


本当にどうしよう。
できれば代わりたいけれど、席替えの交換など許されない。

見えにくいから前の席に行きたい場合は、席替えをする前に申告しないといけないため、もはや私に逃げ場などなかった。


「そんなかしこまらなくていいよ。
せっかくだし仲良くしよう」

「あ、その……」


仲良く……だなんて、正直避けたい。
けれど岸田くんは諦めてくれそうになかった。


「ちょっと岸田!天使が……違う、彩葉ちゃんが困ってるじゃないの!」


ちょうどそのとき。

悠くんの前の席であり、岸田くんの窓側のとなりである谷野美咲(たにのみさき)さんが間に入ってくれた。