12/25、クリスマス。


ベージュのダッフルコートに黒いスカートにスパッツ、緑のブラウスに赤いマフラーを身につけて近くにある大きなクリスマスツリーに向かう。



昨日のクリスマスイブに西野くんからメールが来た。


「明日の夜6時、近くのクリスマスツリーの前で待ってる、最後に会いたい」


会うべきか会わないべきか迷った。


正直会いたかったし、断る理由もない。


一方的に私だけを言いたいことを言うのもおかしいから。


約束時間の10分前。もう西野くんはいた。


「早いね」


「早く会いたかった」


「…綺麗なツリーだね」


あまりにも大きくて真上から見るのはキツいから後ろに下がってツリーの全容を見る。


1番上にある星が輝いててすごく綺麗だった。


「…美波、、、、俺はまだ好き」


私の手を握って放った言葉は息のように白く消えなかった。


重く私の心に響いた。


西野くんの目は私では無くツリーを見ている。


でも揺るがない目でツリーを見てるからはっきりとした気持ちなんだろう。


「好きだけど、、、好きなんだけどなぁ……」


西野くんは大きく息を吐いて下を向く。


そしてすぐツリーを見て、私の手は繋がれたまま西野くんのコートの左ポケットに入った。


「俺はこの想いを消せそうにないし、消したくない。俺は美波とずっといたい。一緒に未来を過ごしたい。大人になる過程をずっと見てほしいし一緒に老けていきたい。」



「…え?」


私は思わず西野くんの顔を見る。


「だから、俺が言いたいのは……復縁しよう。俺ら」


西野くんはたった2日間だと思われるかもしれないけどずっと考えていたのだろう。


恋愛に正解はない。自分がこれだと思ったのが正解。


その正解が相手と一緒なら一緒になるし、違ったら離れる。


単純なものに思われがちだけど、正解を導くまでは気持ちが行ったり来たりするしたくさん悩んでいろんな気持ちが含まれる。


それを全て含んで愛してるか、愛してない。


結婚するか、結婚しない。


になる。


私の正解と西野くんの正解は違う。正直真逆。


でも私の正解は自分の本音ではない。


気持ちを殺して殺して、ナイフを刺して息の根を止めてまで出した答え。


西野くんの正解は私に「素直になっていいんだよ」


って間接的に言ってるもん。


もしかしたら、西野くんは私の気持ち見抜かれてたかな?


そしたら西野くんは十分大人だよ。


「西野くん……私のこと好き?」


「分かってるだろ、そんなこと」


「ハッキリ聞きたいの」


変なプライド??が私を邪魔する。素直になれればいいのに。心だけお子ちゃまのままでいれればいいのに。


「愛してるよ、七瀬美波さん」


今日初めて私の目を捉えた西野くんの目。


悲しそうな寂しそうな目をしてるけど、強く光を放っている目。


「私も愛してるよ」


「ん、もう離れないで」


クリスマスツリーの前で私たちはキスをした。


目を瞑ってお互いに愛情を確かめるように。


本当に恋愛って難しい。恋愛マニュアル本ってものがあってもその通りにはいかない。何故なら操作できない心で恋をするから。自然を湧き出る感情で恋をして、人を愛するから。


私は純粋に西野 颯が好き。


愛を阻むものも出て来たけど颯は受け止めてくれた。私は決めたんだ。


ーーー愛を貫くことを。



Fin. 2020 05/26