「みなさんおはよう〜」



土日は颯と家にずっと居て、ある意味監禁されながら過ごした。


すっかり手首や足の痛みはなくなり、学校には風邪で休んだことになっていて、今日は佐々木先生が娘さんの看病で休暇を取り、私が今、教壇に立っている。



「先生、金曜に休んだのなんで!?」
「せんせ、元気?」
「俺、心配したんだよ〜」


生徒からの心配の声。


申し訳ないけど少しは考えてくれて嬉しい。


「みんな、ありがとう、私は元気です!」


「あの〜、先生?」


「どうしたの?奏多くん」


学級委員長を務めている伊藤 奏多くん(私のクラスは謎に伊藤が多いから名前で呼んでる)が眠そうな声で私に話しかけてくる。


朝は弱く遅刻も多いけど、成績優秀。


「先生方の文化祭の劇の内容知ってますか?パンフレット作らないといけないんで」


「うん?劇?劇するの?」


「え、先生知らないの?先生も劇するんだけど内容誰も教えてくれないから知ってるかな〜って」


「ごめん分かんない」


「そうですよね、休んでたから。俺は七瀬先生の劇見たいな〜」


「え?」


「俺も!」
「私も〜、先生可愛いもん」
「うんうん」


今日はやけに私を心配してくれる生徒達。みんなが面白がったり笑ってる姿を見るとずっと教師をやっていたし教師は私にとって天職。


でも1人の目線がどうしても気になる。


西野くん、、、嫉妬してますよね??


私が裕太からあんな目にあって以来、西野くんは嫉妬が多くなったし独占欲、監禁欲大爆発している。


「七瀬先生、もう1限始まりますよ?」


西野くんの少し強い口調で言われて思わずハッとする。まだ5分あるけど、歯向かえば本当に監禁されて学校行けなくなるかもしれない。


いや、行けない。


「そうだね、これでHRは終わります〜」


少しドキっとして教室を去って職員室に入る。


この高校に来て今年が初めてだから文化祭でなにをするか分からない。


隣のデスクの國分先生に聞いたら、


「私、ジュリエットですか!?!?」


私が聞いたことを整理してみると、


文化祭では学年で3クラスが代表で劇をすることになっている。それに担任団で劇をするのは毎年恒例らしい。そして今年はロミオとジュリエットでジュリエットが私ということになったらしい。



私の許可なく。


でも年上の先生方に逆らうわけにはいかない。ここは渋々やるしかない。



「七瀬先生よろしくね〜!あ、あと、ロミオは松本先生だからね」


松本 玲央(まつもと れお)先生。私と一緒で同い年で今年転任してきて同じ3年副担任。一緒に仕事したり相談したりして先生の中では話しやすい先生。


だから、松本先生がロミオは嬉しい。


でも、松本先生は大学生時代モデル活動もしていたことがあってルックスがいい。長身ですらっとしていて、他の女子高生から大人気。今年のバレンタインはその時は男女共学だったからか、チョコを87個貰ったという『伝説』?を聞いた。それくらいモテる松本先生とロミオとジュリエット…



劇は一般人公開だからいろんな人たちが見る。これで私に嫉妬とか来たら怖い。女子の嫉妬は怖い!!!


劇の内容はシークレットらしく内密に劇の練習を続ける。


台本は演劇部の顧問の島崎先生が本格的に作ったらしく、演技指導も厳しく放課後、空が暗くなるまで練習を繰り返した。


お陰さまで1週間以上颯とお互いの家で会っておりません。


颯には文化祭の準備で忙しい!って言って通じたからよかった。


颯はロミオとジュリエット知ってるかな?


演技力なんて微塵もないけど、少しはあっと言わせるような演技をしなきゃ!!


先生だけど文化祭に気合いを入れるのは悪くないよね??


遅いけど青春を楽しんでる感じがしていい。


こんなに劇に一生懸命にやるのは初めて。


私が高校生の時にも劇はあったけど、結構ふざけてた記憶がある。というより、主役とか初めてだから緊張する……