「絵里ちゃんママ。夏休み中 軽井沢に 帰らなくてもいいかな?」

と由希は言った。
 

「パパとママ、待っているんじゃない?」

絵里加のママは、やれやれと言う顔で 由希を見る。
 

「じいじとばあばは 心配だけど。でも 東京にいたいの。」


俯いて だんだん声が 小さくなる由希に、
 

「淳ちゃんが産まれて 絵里加が 大変だから 由希ちゃんに 手伝ってもらえると みんなも 助かるよね。」


と絵里加のパパは言った。


まるで 由希が 東京に残ることを 絵里加の家族が 頼んでいるように。

由希は 明るく顔を上げて 絵里加のパパを見る。

優しい笑顔で 頷いてくれる 絵里加のパパとママ。
 


「そうね。私から 美奈ちゃんに 頼んでおくわ。」


温かい言葉に 由希は 泣きそうになるくらい 嬉しかった。


「どうせ 会社の夏休みには みんなで 軽井沢に行くからね。」

絵里加のパパの言葉に 由希は 笑顔で頷く。