ゆっくりゆっくり、いつもよりスローペースで歩いてたら真理ちゃんが嬉しそうに高瀬の腕を握った。

「ねぇねぇ、クリスマス予定ある? デートしようよ!」

デートのお誘いだって、かわいい子は高瀬の腕を取ってブンブン振って上目遣いで。

高瀬は振り払うでもなく、されるがままになっている。

あんなふうにお願いされたら、男子はみんなドキッとしちゃうと思う。

反面、わたしにはとてもじゃないけどできないなって自己嫌悪。

そういえば前にも真理ちゃん、一度でいいから遊んで的なこと言ってたよね……。

『遊ぶ』って、どこかに出かけて普通に遊ぶの遊ぶ?

それとも……。

自信なんて一気になくなって、心が沈んでいく。

クリスマス……。

わたしなんかより、真理ちゃんを選ぶに決まってるよね。

ツラくてふたりの姿を見てるのはもう限界。

途中で方向転換して自販機に寄った。

「環ちゃん?」

カバンからお財布を出そうとしたら、ふと名前を呼ばれて振り返る。

「渡瀬、くん……」

「おはよ、久しぶりだね」

渡瀬くんは爽やかに微笑んだ。

こうやって見ると好青年って感じだけど。

「お、おはよう、ございます」

合コンの日以来会っていないから少し気まずい。