だけど……こんなことで負けたくはない。

近藤さんの出した選択肢はどれも呑めないものばかりだった。

来週まではまだ時間があるわ。

それまでに、自分をここまで支えてくれた編集部にも礼さんにも迷惑かけない方法を考えなくちゃ。

あきらめなければできるはず。

最悪……私が全てを引っ被ればいい。

靄がかかっていた頭の中に少しだけ日の光が差していた。

「私もTUTA書房に偵察に行ってきます!」

そうよ。こんなところでくよくよしてたって霧が晴れるわけない。

気合入れなおさなくちゃ。いつもの自分に戻ろう。

足元のバッグを手に持ち、坂東さんの後に続くようにフロアを後にした。

外は見事なまでの快晴。

ビルの間から吹き抜ける風は初夏の匂いを漂わせていた。