そこから先は彼の声や唇やその繊細な手の動きについていくことに必死だった。

この部屋の少し先にいる澪さんの存在を感じながら、もう少しで洩れそうになる声をぐっと堪え唇を噛んだ。

それなのに、彼はまるでそうやって堪える私を弄ぶかのように敏感な部分を攻めてくる。

甘く優しく、そして時には猛獣のように荒々しく。

彼に触れられる度に、幾重にも自分の中に彼への切なくて愛しい思いが沸き上がってくる。

でも、その思いはひとたび言葉にしたら、あわぶくのように繊細でもろく消えてしまいそうな儚さがあった。

声に出した途端、この幸せな夢が全て覚めてしまうような。まるで人魚姫みたいだ。

「あっ……」

少し気を緩めてしまったせいで、思わず声が洩れてしまった。

恥ずかしくて思わず自分の手で口を塞ぐ。澪さんに聞こえてはいないだろうか?

「必死に耐えているお前は一層俺の欲情に火をつける」

彼の潤んだ瞳が私の目を正面から捉え、口元は意地悪に微笑む。

「夜はまだ長い。今夜は覚悟しろ」

かすれた声でそう言った彼は、そのまま私を抱きすくめ私が意識を失ってしまいそうになるほど繊細で甘美な愛の世界に誘っていった。

もう彼から離れたくない。

ずっと一緒にいたい。

彼の愛撫に声を殺しながら、何度も心の中で叫んでいた。