16.この俺が……~礼side~

俺は限界に達していた。これ以上一緒にいたら歯止めが利かなくなる。

それは、俺だけでなく彼女にとっても不利益な状態になるのは目に見えていたのだが……。

結果的に俺の一方的な都合で都を日本に追い返してしまったような形になってしまった。きっとあいつは俺に対して理解不能だと腹立たしく思っているに違いない。

変に気を持たせるようなことを言わない方が、お互い後腐れなく別れることができると思っていた。

しかし、あいつが帰国してからの俺は正直腑抜け同然。

仕事にも身が入らず、「いつものお前らしくない」とあの後行ったミラノで若狭シェフに笑われた。

どうかしている。

たった数日間一緒に過ごした都がこの場にいないというだけで、全てのものが色あせて見えた。

頭に浮かんでくるのは、あいつのネコのような勝気な目と子供のような顔で寝ている姿。

そして、いつも俺のことを気遣うあいつの笑顔だった。

こんなに誰かを愛しく思うのは久しぶりすぎて俺自身困惑している。

この年になって、まさか誰かに本気で恋をするとは思っていなかった。

仕事と社員のために自分の人生を捧げると決意していたのはずだったこの俺が。


彼女の雑誌に出ることはないが、ここまで引っ張ってしまった責任は感じていた。

それは、例え彼女でなくても俺自身が一人の人間として許せないことだ。

そこで、渡辺とアレッサンドロにすぐに連絡し、彼女の取材を受けてもらえるように頼む。

二人とも、都に対しては好印象だったので二つ返事で了解してくれた。

せめて、俺の代打くらいは先立って手配してやらないと。

あの二人なら十分話題性もあるし、興味深い記事になるはずだ。

そして、俺の紹介ということくらいは記事に小さく載せてもらってもいいだろう。気づく奴は気づくはずだ。

俺にできるのはそこまでだったが、秘書を通して彼女の上司に伝えてもらう。