「……返してっ」
カバンを引っ張ってみても、蒼の力には敵わなくて。
恥ずかしすぎて、じわりと目に涙が浮かんでしまうと
カバンを間に挟んだ状態で、蒼がぎゅっと私を抱きしめた。
「柚」
「……え…」
「……お前は“友達”と遊ぶつもりで来てるかもしれねーけど、
俺はそんなつもりで来てねーから」
「……え?」
「……諦めるつもりはねぇってこと」
耳元で囁くようにそう言われた後、
前を歩いていた笑美さんが、こっちに走ってくるのが見えた。
「蒼ー!早く行くよ!
柚ちゃん大丈夫ー?」
蒼がパッと私から離れて、私のカバンを持った。
「柚が遅いから、笑美が心配してたんだよ。
早く行くよ」
「……うん」
笑美さん、心配してくれてたんだ…。
なのにモヤモヤしちゃって…
それに、私にはクマくんがいるのに…
……最低だ。