4月7日、私の誕生日当日。

本当は当日に公休日を入れるはずだったのだが、他の従業員との兼ね合いもあり、一颯さんも午前中は会議があるとかで出勤になってしまった。それでも8日を公休日にして、シフトをラウンジのモーニングに調整してくれた高見沢さんに感謝したい。今日は定時で上がるはずだったが、連泊のお客様の御要望があったりで、バトラーの仕事が長引き、残業になってしまった。ホテルのサービススタッフは残業なんて慣れっこだから仕方がないが……。

一颯さんは会議が終わったから、半休を使って先に上がっていると言っていた。高見沢さんと他のバトラーに引き継ぎをし、バタバタとホテルを出て急ぎ足で寮に向かう。

寮に着いたら直ぐに着替えをして、身なりを整えて、まとめてあった荷物を持ち、玄関を飛び出した。どうやら、今日は一颯さんが外食に連れて行ってくれるらしいので、身なりだけはきちんと整えたつもり。

私の為に半休を使って待っていてくれてるのだから、早くしなきゃ!

急げば急ぐ程に抜けていて、以前にプレゼントして頂いたネックレスをつけ忘れて部屋に戻り、スマホの充電器を忘れた事に気付き、再度、部屋に戻ったりした。

「お疲れ様。……酷く疲れてるみたいだけど大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。ちょっと忘れ物しちゃって…。それより、遅くなってしまいすみません!」

「想定内だから平気。上がれなかったんだろ?俺も半休を使うつもりが使えずに定時で帰って来たから」