待ちに待った一颯さんとの一泊二日の旅行です。

「海が見える露天風呂、最高ですね」

温泉旅館でのアーリーチェックイン予約プランで、早々と客室に入れた私達は露天風呂に入っている。一颯さんが予約してくれた高級旅館の特別室には、展望露天風呂がついていて海を眺めながら温泉につかる事が出来る。

「何でそんなに離れて入っているんだ?」

「い、一颯さんがジロジロ見るからでしょ!まだ明るいし恥ずかしいよ…」

温泉はとても心地良いのだけれど、一颯さんの視線に耐えられそうもない。そもそも一颯さんに半ば強引に一緒に入ろうと押し切られてしまって、今に至る。

「もう何度も見てるんだから恥ずかしがる事はない。こっちにおいで…」

一颯さんは笑顔で手を差し伸べてくれたが、やっぱり恥ずかしいので拒否してしまう。

「……っう、駄目です!…っわぁ、」

胸などが見えないように端に居た私を覆い隠すように、一颯さんは後ろ側から抱きしめた。

「こうすれば見えない」

抱きしめている腕が私の胸に当たっているし、耳元では一颯さんの吐息が聞こえる。一緒にベッドに入るよりも恥ずかしく、緊張感もある。鼓動の高鳴りも最高潮。

「……っひゃ、」

「恵里奈は相変わらず、耳元と首筋が弱いな」

不意打ちで耳たぶと首筋にキスをされて、咄嗟に反応してしまう。

「……だってぇ、不意打ちずるい」

「連休を取る為に忙しくて三週間以上はお預けくらってるんだからな。バレンタインもアイツのせいで夜は一緒に過ごせなかっただろ?年末年始とバレンタインと全部まとめての今日だから!……クリスマスの穴埋め旅行だけど、あの時は"した"から除外してやる」

確かに年末年始は忙しく、更にバレンタイン当日も幸田様騒動があったからチョコレートを渡したのみで一颯さんの部屋には行っていない(支配人室でキスはしちゃったけれど……)。