青春ヒロイズム



質問の意図がよくわからなくて無言で見つめ返していると、星野くんが困ったような表情を浮かべた。


「いや、別に深い意味はないんだけど。深谷に声かけられたあと、智ちゃんの顔付きが急に変わったから。どんなこと言ったのかなーってちょっと思っただけ」

「私も咄嗟に言葉が出ただけだから、正確には覚えてないんだけど。まだ巻き返せるよ、とか。そんな感じのことを言ったと思う」


そのときのことを思い出しながらゆっくりと答えると、星野くんは「ふーん」と言いながらちょっと気まずそうにうつむいて首筋を掻いていた。

星野くんは、村田さんのことが気になって私に話しかけてきたんだ。

彼が隣に座った目的は、私への労いではなくて村田さん。

そう思ったら、切なさで胸が締め付けられるような気がした。

非日常の学校イベントの日だって、星野くんの世界の多くを占めているのは村田さんの存在なんだ。

ずっと前から気付いていたことだけど、改めてそのことを思い知らされてしまう。