青春ヒロイズム



結構勢いよく転んだ村田さんの腕と膝は、大ケガというわけではないけれど、そのままにしておくには見た目が痛々しい。


「これくらい平気だよ」

「いや、行っとこう。ついていってあげるから」

「えー」

「私も、診てもらったほうがいいと思う」

渋る村田さんに、私も苦笑いで救護室に行くよう勧めると、彼女が少し不服そうに頷いた。


「友ちゃんまでそう言うなら……あ、友ちゃん。今日は一緒にお昼食べようよ」

岸本さんに引き摺られるようにして救護室に向かう村田さんが、私を振り向いて誘いかけてくる。


いつもはたいていひとりでお弁当を食べるのだけど……

今日はなんとなく、村田さんの誘いに応えなければいけないような気がした。


「うん、ありがとう」

頷くと、村田さんがほっとしたように笑う。


「あとでね、友ちゃん」

村田さんは私に手を振って、岸本さんと一緒に救護室のほうに歩いて行った。