青春ヒロイズム



列に並んで退場するとき、村田さんが私に笑いかけてきた。

「友ちゃん、さっきはありがとう。また友ちゃんの言葉に励まされちゃった」

「え?」

首を傾げると、村田さんがクスリと笑う。


「うーん、そうだよね。小学生のときのことだし、きっと覚えてないよね。あのね、友ちゃんが声かけてくれて頑張れたの、実はこれが二回目なんだよ。だから、ありがとう」


二回目、ってなんだろう。

村田さんとは小学生のときに二回くらいは同じクラスになってると思うけど、そんなふうに感謝されるようなことを言った記憶がない。

考えていると、退場門を出たところで岸本さんが手を振っていた。


「お疲れ、智香。深谷さんも。見てたよ、追い上げ凄かったね。智香や深谷さんのクラスの応援席、すごい盛り上がってたんだよ」

笑顔の岸本さんに声をかけられて、小学生のときのことを思い出そうとしていた思考が遮られる。


「友ちゃんたち速かったよね。最後で追い抜いたときは思わず叫びそうになっちゃった」

「それはいいけど、智香。あんたは救護室でケガ診てもらったほうがいいんじゃない?」

にこにこ笑っている村田さんのことを見て、岸本さんがちょっと目を細める。