青春ヒロイズム



練習では存在感をあまり出さずに黙っていた私が、本番になって急に声かけなんてしたら嫌がられるかもしれない。

そう思ったけど、持田さんは何も言わずに私に合わせて走ってくれた。

そのおかげもあって、だいぶ差がついていた五位のペアとの距離が少しずつ縮まっていく。


「深谷さん、追いつこう」

不意に隣からそんな声がして、それを合図にするかのように私たちはさらにペースをあげた。

五位のペアとの差がさらに縮まって、バトンを繋ぐギリギリ手前で追い越す。

次に走る三年生のペアにバトンを繋いだとき、クラスの応援席のほうから大きな歓声が聞こえたような気がした。

走り終えてチームの列に並ぶと、ちょうど私たちがバトンを繋いだ三年が次のペアにバトンを渡すところだった。

私たちが追い上げて順位をあげた成果があったのか、四位のペアのすぐ後ろにまで差し迫っている。

最終的に三年生のペアが一組追い抜いて、私たちのチームは四位だった。