「アキナー、もういいじゃん」
持田さんが声をかけるけど、怒っている野宮さんの耳には届かないみたいだった。
困っていると、二人三脚の競技を担当していた体育祭委員のひとりが駆け寄ってくる。
「棄権しますか?」
体育祭委員の言葉に、ぎゅっと拳を握りしめる。
「そうですねー……」
「村田さん、まだ巻き返せるよ。頑張れ!」
体育祭委員に促されて棄権を決めようとする持田さんの横で、気付くと私は大きな声で叫んでいた。
普段おとなしくしている私の叫び声に、持田さんと体育祭委員が大きく目を瞠る。
村田さんを責めていた野宮さんは驚いた顔で私を振り向き、うつむいていた村田さんはハッとしたように顔を上げた。
みんなから注目されて、思わず叫んでしまった自分にびっくりする。
慌てて口元を押さえると、村田さんが強い意志を持った瞳で私を見つめて小さく頷いた。



