じっと見てきて、キモいやつだって思われてるかも。

いまだに感じる視線に、筆を持つ手が震えそうだ。

あぁ、もう。冷たい目で睨むのはやめて欲しい。


「深谷、そこの筆と絵の具ちょうだい」

震えそうな手で筆を握り直したとき、星野くんに呼ばれたような気がした。

星野くんから冷たく睨まれることはあっても、教室で普通に声をかけられることなんてあり得ない。

まさかとは思いながら顔をあげると、星野くんが私の後ろのほうを指差してもう一度私の名前を呼んだ。


「深谷、絵の具とって」

私に対する星野くんの話し方があまりに自然で普通なことに驚いて、一瞬声を失う。

大きく目を瞠る私に、星野くんが続けて話しかけてきた。


「あと、筆は俺と竜馬のとふたり分」

「え、俺も手伝うの?」

「だって、竜馬も部活まで時間あるじゃん」

面倒臭そうに愚痴を零す石塚くんを見上げて星野くんが笑う。