青春ヒロイズム



「へぇ。星野くんて、意外に正義感強いんだ」

私のこと嫌ってるくせに、困ってることには気付いてくれたんだ。

本当はそのことが嬉しいのに、つい星野くんの反感を買うようなことを言ってしまう。

そんな私の言葉に、星野くんは案の定不快そうに顔を顰めた。


「別に。そこの中庭で練習してたら、たまたま揉めてるのが見えたんだよ。そんな嫌味言えるなら、俺が出るまでもなかったな。次は自分で撃退しろよ」

不機嫌な声でそう言って立ち去ろうとした星野くんが、私の足元に落ちている潰れたイチゴミルクの紙パックに気が付いて足を止めた。


「なぁ、それって智ちゃんに?」

イチゴミルクに視線を落としたまま、星野くんが私に訊いてくる。


ふたりの仲の良さに今さら嫉妬することでもない。

でも、イチゴミルクを見ただけでそれがすぐに村田さんと結びつくんだ。

財布を受け取ったときの私の手の震えや、抱えていた気持ちには少しも気付いてくれないのに。

そう思ったら、すごく悲しかった。