「あのさー、昔から思ってたんだけど。俺、深谷に何かした?」

予想外の問いかけに驚いて顔をあげると、星野くんが無表情で私を見ていた。

いつも私の存在なんて見えないみたいに避けてくるのに、そんなことを聞かれる意味がわからない。

ただ、変わらず私に対して友好的でないことだけは確かだった。

さっき咄嗟に出てしまった一言に、悪気はなかった。

予定外のできごとに驚いて、意地っ張りな性格が必要以上に前面に出ただけ。

だから、それを伝えて素直に謝ってしまえばこの場はうまく収まるのかもしれない。

でも、私の性格はやっぱりどこまでも意地っ張りで強情だった。


「私のこと、覚えてないんじゃなかったっけ?」

言わなきゃいいことぐらい頭ではわかっているのに、皮肉な言葉が声になる。

その瞬間、無表情な星野くんの口元がピクリと引き攣った。


「この前の教室での俺達の話、聞こえてたくせに」

少しの間を置いて、星野くんから皮肉が返ってくる。