青春ヒロイズム



「あ、ねぇ。お肉も野菜も焦げちゃうよ」

しばらく山辺くんや持田さんたちに質問攻めにあっていた村田さんが、慌ててバーベキューの網を指差す。

見ると、焼いていた食材が焦げて、細長い黒い煙があがり始めていた。

私を含めて村田さんの恋バナに気を取られていたグループのみんなが、慌てて網に箸を伸ばす。


「あー、もうダメなのもあるね」

いくつかのお肉や野菜は真っ黒になってしまって食べられそうにない。

みんなで焦げた食材を退けて、新しいものを焼き直す。

それが焼き上がって食べ始める頃には、もうグループの中での話題は村田さんの恋バナとは全く無関係なものになっていた。

親睦が目的な遠足なだけあって、グループのみんなの会話はバーベキューが始まった頃よりもずっと盛り上がっている。

私はそれを、ただ黙々と食べながら静かに聞いていた。