星野くんたちが私の陰口を言っているのを偶然盗み聞いてしまって以降、私は彼の顔がまともに見られない。


『なんかあいつ、俺の中でいい印象ない』

星野くんの顔が視界に入れば、彼のその言葉が鮮明に蘇ってくるような気がして怖かった。



「深谷、どうした?」

しばらく突っ立ったままでいると、学年主任の先生が声をかけてきた。

周りを見ると、いつの間にか生徒たちはみんなそれぞれの持ち場に散っていて、私ひとりだけになっていた。


「何でもありません。少しぼーっとしてしまっていました」

「そうか。何か困ったことがあったら、いつでも言えよ」

学年主任の先生は、私の顔色を窺いながら言葉を選んで話しているように思えた。

きっとこの先生も、私の前の学校での事情を聞かされているのだろう。

周りと違う行動をとっても、あまり刺激しないように。

そんなふうに、校長先生や生徒指導の先生、あるいは担任から報告を受けているのかもしれない。