青春ヒロイズム



腫れて痛む足首を見つめながら、こんなことの一因になったナルのことを思い出す。

それから、ナルたちのグループに身を隠すように私から逃げてしまった森ちゃんも。

彼女やあの子は、あのままどこかで花火を見上げていたのかな。

私と出会ったことなんて忘れてしまったか、まるで無かったことにして。

もしそうだとしたら。悔しいような悲しいような、なんとも言えない気持ちになる。

それに、未だに何も触れてこないけど、星野くんはナルの話を聞いてどんなふうに思ったんだろう。

そっと隣を盗み見ると、星野くんは下を向いてお茶のペットボトルを手で弄んでいた。


きっと、私のことになんて興味ないんだよね。

悲観的な気持ちで口角をちょっと引き上げながらも、星野くんに訊いてみずにはいられなかった。


「聞かないの?」

「何が?」

私の言葉に、星野くんがおもむろにこちらに視線を向ける。


「傷害事件」

ナルの言葉を借りてそう言うと、足首の怪我よりも胸の奥の傷がキリキリと痛んだ。

僅かに顔を歪めた私を、星野くんが無表情でじっと見つめる。

途絶えることなく響いていた花火の音は、いつの間にか聞こえなくなっていた。