「迎え頼めそう?」
「うん」
スマホを下ろしながら頷くと、星野くんがほっとしたような顔をした。
「よかった。迎えが来る場所まで移動する?」
「うぅん。地図送れば、ここまで来てくれるって」
「そっか」
「ごめんね。今日の花火大会、台無しにして」
スマホを操作して現在地の地図をお母さんに送りながら、小さな声でつぶやく。
この場所からはもう花火は見えないけれど、花火の音は遠くからずっと聞こえてきている。
花火はそろそろクライマックスに差し掛かっているのかもしれない。
聞こえてくる破裂音の間隔がさっきまでよりも短く、そして激しくなっていた。
「今さら?俺は別にそんなのいいよ。本当に見たかったのは、俺じゃなくて深谷のほうなんじゃないの?移動中に、ちょっとは見れた?」
苦笑いで尋ねてくる星野くんを気にして、曖昧に頷く。
空なんて一度も見上げもせずに黙って歩く星野くんに申し訳なくて、実際には全く花火は見なかった。
でもこんなことにならなければ、星野くんと一緒に河川敷に座ってゆっくり花火を見たかったな。



