◇
星野くんが私をおぶって連れてきてくれたのは、花火大会の河川敷から少し離れたコンビニだった。
河川敷に近いコンビニの前は、見物客のために店の前にワゴンを出して食べ物や飲み物を売っていたり、店内が混雑していたからだ。
「ここで待ってろよ」
コンビニの外の邪魔にならない場所に私を降ろした星野くんが、ひとりで中に入っていく。
しばらく待っていると、星野くんが買い物袋を持って出てきた。
「無理せず座っとけばいいのに。はい、これ」
コンビニの外壁に体重を預けてなんとか立っている私に、星野くんがペットボトルのレモンティーを差し出してくる。
「ありがとう」
掌に伝わってくるレモンティーの温度はちょうど良く冷えていて、心地よかった。
「何が好きなのかわかんないけど、こないだそれ飲んでたから」
買い物袋の中を覗きながら、星野くんがつぶやく。
こないだって、中庭で話したときだよね。
覚えててくれたんだ。
そんな些細なことが嬉しくて、胸の奥がきゅんとした。



