青春ヒロイズム



「立てそうにないんだろ?」

そう尋ねられて始めて、私は星野くんの行動の意図することに気が付いた。

歩けそうにない私をおぶって移動してくれるつもりなんだ。

そのことに気付いた途端、目の前の星野くんの広い背中を必要以上に意識してしまう。

私と星野くんはただのクラスメートかそれ以下で、なんなら嫌われててこの間まで目も合わせてもらえなかったのに。

そんな彼の背中にくっついて全体重を預けるなんてことできない。

いくらなんでも恥ずかしすぎる。


「いや、それはいいよ!これくらいなんともないし、気合い入れたら歩けるから」

前に出した手と顔をこれでもかというくらい左右にぶんっと振って後退りしようとすると、また足首に激しい電流が走った。


「いっ、た……」

再び足首を押さえて蹲る私を、星野くんが呆れ顔でみてきた。


「おぶられるのが嫌なら、抱き上げようか?」

ため息交じりに尋ねてくる星野くんの言葉が冗談なのか本気なのかわからない。

無言で様子を伺うと、くるっと私に向き直った星野くんがこっちに距離を詰めてきた。