青春ヒロイズム



本当は差し出された星野くんの手をとってしまいたいけど。

このまま彼に甘えてしまうのは怖かった。


「平気」

首を横に振って、目の前に差し出された掌を拒む。

自力で立ち上がろうとすると、転ぶときに捻った左足首に激痛が走った。


「いっ……」

なんとか悲鳴は堪えたものの、あまりの痛みに表情が歪む。

足首を押さえて蹲ると、星野くんの顔色が変わった。


「見せて」

「いいよ、大丈夫だから」

「それは大丈夫なやつの顔じゃない」

星野くんが強い口調でそう言って、足首を押さえる私の手を退ける。

そのときに星野くんの手が軽く足首に触れた。

それだけでも患部に電流が走ったような痛みを感じ、小さな呻き声を漏らしてしまう。


「捻挫かもな。暗いからはっきりわからないけど、腫れてる気がする」

星野くんがそう言って、しゃがんだまま動いて私に背中を向けた。


「乗って」

「え?」

肩越しに振り向いた星野くんをぽかんと見つめると、彼が焦ったそうに息を吐いた。