「星野くん、気を付けたほうがいいよ?この子、キレたら今みたいに何してくるかわかんないから」
ナルが顔を顰めて、煩わしそうに私の手を振り払う。
それから、星野くんに蔑むような視線を向けた。
「星野くんだって、あんなことされたのによく友と付き合えるよね。神経図太い同士で案外お似合────……」
「付き合ってないし、星野くんは私とは無関係だから」
ナルの言葉を遮ると、目の前に立ちはだかる彼女を押し退ける。
星野くんには絶対に知られたくなかったのに。
私が前の学校を辞めた理由を知って驚いている星野くんを見てしまったら、もう後ろを振り向けない。彼の顔が見られない。
そう思った私は、衝動的に駆け出していた。
人の流れに従って道を駆けているうちに、左足の下駄がガクッと横に倒れて足を捻る。
強い痛みを感じて左足を庇おうとしたら、バランスが崩れた。
河川側に道を外れて転び、傾斜になった砂利の上をそのまま滑って落ちていく。
すぐに身体は止まったけれど、砂利で擦りむいた腕が痛かった。



