青春ヒロイズム



「どうして俺の名前知ってんだよ」

低い声で警戒心をあらわにする星野くんに、彼女が愛想よくにっこりと笑いかける。


「だって、私たち小学校の同級生じゃん。覚えてない?私、今西 成美」

「今西?」

星野くんが怪訝な顔で、確認するように私のことを見る。


「そうだよ。私とナル、小学校を卒業したあと中高一貫の私立に入ってて、つい最近まで同じ学校だったんだ……」

「そっか」

私が頷くと、星野くんがきつく握り締めていた手を警戒心と共に少し緩めた。

さっきは自ら振り解こうとしたのに、彼女を…ナルを前にしているせいか、途端にものすごく心許ない気持ちになる。

つい縋るように星野くんに視線を向けると、ナルが私の心のうちに気付いたかのように意地悪く笑んだ。


「まさか友が星野くんと一緒にいるとは思わなかったよ。もしかして、今同じ学校なの?」

「そう、だけど……」

「へぇ、そっか。でもさ、星野くんは友が前の学校を辞めた理由を知ってるのかな?」

ナルがそう言ったとき、まだ軽く星野くんと繋がっていた手から力が抜けた。