「あー、森ちゃんね、新学期からちゃんと学校にも来れるようになったの。友のおかげかもね。今日はみんなで花火大会に来たんだけど……友は彼氏と?」
私の目から逃れるように他の子の陰に身を隠したあの子の姿にニヤリとした彼女が、まだ星野くんと繋いだままの私の手を見てわざとらしく小首を傾げる。
「自分のしたことはすっかり忘れて、編入先の学校でちゃっかりオトコ作ってるんだ?楽しそうで、よかったねー」
「違……」
口元にだけ笑みを称えた彼女の言葉には、明らかな敵意が込められていた。
まさかの彼女との再会と、彼女と一緒にいるあの子の姿に頭が混乱しているけど。
私の事情に、星野くんは巻き込めない。
手を振り解こうとしたら、星野くんが私の手をきつく握り直した。
「誰だか知らないけど、今日こいつとここに来てるのは俺だから。行こう、深谷」
私たちの不穏な空気が伝わったのか、星野くんが低い声で彼女を牽制して私を連れて去ろうとする。
「星野くん……」
「星野って、もしかして星野 奏樹?」
私を引っ張り去ろうとしていた星野くんが、彼女に訊ねられて怪訝そうに眉を寄せた。



