青春ヒロイズム



「深谷?」

言葉を失って固まってしまった私に、星野くんが心配そうに声をかけてくれる。

でも、その声に反応する余裕はなかった。


「ひさしぶりだね、友」

あまり友好的とは言えない笑みを浮かべて、彼女が私に近付いてくる。

それに気付いたグループのうちの数人が足を止めて振り返った。


「ナルー、どうしたの?」

「こんなところで会うなんて思わなかったよ」

呼びかけてくる友達の声を無視して、彼女が少しも笑っていない目で口元だけで微笑みかけてくる。


「友が私たちに何の挨拶もなしに急に学校辞めちゃったから、どうしたのかなーって思ってたんだよ。ね、森ちゃん?」

彼女はそう言うと、わざとらしく後ろを振り返った。


森、ちゃん────……?

まさかと思いながら彼女の視線の先を追うと、足を止めた数人の中によく知ったあの子の姿がある。

どうしてあの子が……?


愕然とする私と目が合うと、あの子が気まずそうに目を逸らす。

青ざめながら視線を戻すと、彼女が愉快げにクスリと笑った。