「花火大会終わるまで、俺のそばから離れるなよ」
ぐっと手を引っ張って私を隣に立たせた星野くんが、不機嫌そうにつぶやく。
ビミョーだって言ってたのに。手がかかるって面倒くさそうにしてたのに。
花火大会の間だけでも、隣にいることを許してくれるの……?
いい印象を持ってないはずの私なんかを受け入れてくれる、星野くんの優しさが嬉しくてちょっと泣きそうだ。
繋いだ手を思わずギュッと握りしめると、星野くんが肩をビクリとさせた。
星野くんの優しさについ付け上がってしまったけど、嫌がられたんだと思う。
「ごめん」
「なんで?」
慌てて謝ったら、星野くんが複雑そうな表情を浮かべた。
「なんでって────……」
「あれ、友じゃん?」
そのとき、そばを通り過ぎようとしていた女の子たちのグループのうちのひとりが、立ち止まって私を振り向いた。
「ナル……?」
彼女を見た私の顔が、一瞬にして強張る。
それに気付いた彼女が、意味ありげに口端を引き上げた。



