「面倒くさいならそう言ってよ。私とふたりでビミョーだって思ってるのは星野くんでしょ?」
足を止めてつぶやくと、私に引っ張られるようにして立ち止まった星野くんが振り向いてため息を吐く。
さっきよりも深い、星野くんのため息。
言葉なんてなくても、その深さで星野くんの本音がわかる。
トイレが嘘だったことはバレてる。そのうえで、面倒なやつだと呆れられてる。
星野くんに繋がれた手を乱暴に振り払うと、泣きそうな気持ちで彼の前から逃げ出した。
人の流れとは反対方向に走り出したせいで、何度か人に突き飛ばされそうになる。
だけど星野くんがいるほうには引き返せない。
人の波に逆らって進んでいたら、何度目かにぶつかった男の人に突き飛ばされた。
「おい、お前邪魔。進行方向決まってるんだから、ちゃんと守れよ」
背の高い男の人が、怖い顔で私を睨む。
「すみません……」
「は?何?聞こえねーんだけど」
震える声で謝罪したけど、怒った男の人に乱暴に肩をつかまれて揺すられた。



