星野くんが黙ってスマホを弄っているから、私も真似してスマホを出してみる。
特に意味もなくスマホを弄って時間をやり過ごしていると、星野くんが空笑いと共にぼそっとつぶやいた。
「智ちゃんも岸本もいないし、俺とふたりじゃ深谷もビミョーだよな」
反射的に顔を上げると、星野くんが自嘲な笑みを浮かべて足元を見ていたから悲しくなった。
「そ、そんなことないよ!」
全力で否定すると、星野くんが私を見て驚いたように目を瞠る。
そりゃ、星野くんとふたりだと何を話していいかわからない。
気の利いたことも言えなければ、可愛げな態度をとるのだって柄じゃない。愛想よく笑顔を振りまくのだって得意じゃない。
そんなふうだから絶対に私の気持ちは伝わってないだろうけど。
さっきからずっと、星野くんの態度や言葉に一喜一憂させられてはドキドキしているのに。
星野くんといてビミョーだなんて思うわけない。
きっと、こんな状況ビミョーだって思ってるのは、私じゃなくて星野くん……なんだよね?



