せめてこれ以上星野くんに迷惑かけないように自力で登らないと。
悲しい気持ちで足元に視線を落とす。
支えてくれた星野くんの手を離そうとしたら、彼が私の手をギュッと握り直して土手の上へと導くように引っ張った。
「まぁ、かわいーけど」
「え?」
ボソリと上から降ってきた声に、ドキリとする。
ぱっと顔を上げてみたけれど、土手を登る星野くんは私を見てはいなかった。
なんだかすごくドキドキさせられる言葉が聞こえたような気がしたけど、私の聞き間違いだったのかもしれない。
でも、手を離さずに引っ張ってくれる星野くんの力は強くて優しい。
先を歩く星野くんの背中を見つめるだけで、鼓動がどんどん速くなる。
繋いだ手から私の心臓の音までが伝わってしまいそうで、歩いている間ずっと緊張しっぱなしだった。
「この辺で座る?」
土手を半分くらいまで登ったところで、星野くんが足を止める。
振り向いた星野くんの手が自然と離れていって、私はそのことを少し残念に思いながら小さく頷いた。



