青春ヒロイズム



せめて岸本さんみたいにすごく可愛かったり、村田さんみたいに笑顔で癒せたりしたらいいんだろうけど。

残念ながら、私には特別秀でているところもない。


「深谷?」

また自信をなくして立ち止まっていると、星野くんに呼びかけられた。


「どうした?」

「え?」

「腹減りすぎて動けないとか?」

顔を上げた私を見て、星野くんが悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「そんなわけないでしょ」

人が自信なくして落ち込んでるのに。

顔を赤くして否定したら、星野くんがクスリと笑った。


「なんだ、元気じゃん」

「え?」

星野くんの声がやけに優しく響いたような気がして、胸がざわめく。

もしかして、私が落ち込んでることに気付いてた……?

まさかとは思うけれど、星野くんの言葉に少しだけ期待してしまう。


「深谷、早くしろよ」

星野くんがなかなか歩き出さない私を急かす。


「ごめん」

私はほんの少しの期待でドキドキしながら、星野くんの背中を追いかけた。