#秘書#
「岩崎さん、明日から入社ね」
「っえ!…てことは…」
「うん!明日から正式に俺の秘書としてよろしくね」
そう言って社長が手を差し出した。
「女性に対して男性の方から握手を求めるのは失礼にあたります」
「よし!合格」
瞬時に私を試してくる社長はとても頭が切れる人だ。
私は秘書として認めてもらえた気がして気持ちが高ぶった。
これからが本番だと今一度意気込み、心を弾ませながら帰宅をする。
「ただいまー」
「おかえり、なんか元気だね?」
「明日から入社だってー!!」
豊に満面の笑みを見せた。
「まじかっ!おめでとう!嫁が秘書とか自慢もんだな」
「私、頑張るから」
「おう!応援する」
それから、入社して1ヶ月間は毎日が不安と緊張で頭がおかしくなりそうだった。
そんなガチガチな私に社長と社員さん達が全面的にサポートをしてくれたお陰で、心強く仕事に専念することができた。
ある日、社内で女性社員と鉢合わせし、
「あっ!社長。お疲れ様です。今日も相変わらず素敵ですね」
と、甘ったるい声で上目遣い。
この人はきっと、社長に好意を寄せているな。
女の勘ってやつ。
「ありがとう。君も素敵だよ」と、返されまんざらでもない顔をしている。
「あ、ありがとうございます。新しい秘書さんですか?可愛いですね」
「だろ?俺の秘書は厳選しないとだからな」
そう言って、女性社員をはぐらかし、さも悔しそうな顔をして女性社員はその場を後にした。
なぜか勝手に勝ち誇った気分になった。
「じゃ俺は会議行くけど多分少し長引くと思うから、13時に坂本社長がお見えになったらお待ちいただいて」
「かしこまりました。気を付けて行ってらっしゃいませ」
社長をお見送りして秘書室に戻ろうとした時、背後からとんとんと肩を叩かれ、私は振り返る。
さっきの社員さんだ。
えっ!なんか、顔が怖いんですけど…
「ど、どうされました?」
「あんたさ、どこの女か知らないけど社長に手出さないでね」と、怒気をこめた声で言われ、その瞬間、高校時代の言葉がフラッシュバックする…
“熊沢さーん!私の彼氏取らないでねー?親が親なら子も子で心配だからー。ほんと汚らわしい”
目の前が一瞬真っ暗になり私は過呼吸になってその場にしゃがみこんだ。
「っえ!な、なに?大げさなんだけど…」
ッドン!!!!
立ちすくんでいる女性社員を払いどけて誰かが私の背中を擦る。
擦っててくれたおかげですぐに落ち着きを取り戻し、「すいません、ありが…」と言いながら顔を上げると、
「っ社長!!!」
いるはずのない社長を目の前に驚きを隠せない。
「会議は…」
「そんなことはいいから…立てるか?」
「あ、はい」
社長に支えてもらいながら立ち上がる。
「あの…私…なにもしてないですよ…」
この光景に焦る女性社員。
そんな女性社員を見向きもせずに社長は私を秘書室へと連れて行ってくれた。
秘書室に着いてソファーに腰掛けると、社長がお茶を出しながら、「大丈夫か?」と、私の顔を覗き込んだ。
「すみません、ありがとうございます。ちょっと疲れちゃったのかな…」
そう言いいながら苦笑いを浮かべ首を傾げて見せた。
「ああゆうことよくあるの?」
「いえいえ、初めてです。心配なさらず」
社長は睨みつけるかのような真剣な目で私を見つめる。
「本当ですよ。それより会議遅れますよ!」
「今日の会議は出なくても大丈夫だから。そんなことより、さっきの子かなり気が強いから気を付けてね」
私の事を心配してくれてるんだ…。きっと、こうなるって予測して戻ってきてくれたんだね。
「っごめんなさい…」
「なんで謝るんだよ。大事な会議じゃないって言ってるだろ」
「…」
「とりあえず、13時に坂本社長が来るからそれまではゆっくり休んでて」
こんなことで迷惑を掛けてしまうなんて…。大事な会議のはずなのに。
過去にとらわれている自分が情けなかった。
それからというもの、社長は今まで以上に私に気を配るようになった。
そして、入社から3ヶ月が経とうとしていた時、仕事を終えいつものように社長に挨拶をし、帰る支度を始めていた。
「ゆう!ゆうに話があるんだけど、少し時間大丈夫?」
それは突然の事で久し振りに名前で呼ばれ、心がざわついた。
私は社長のデスクの前に立つ。
「どうかされましたか?」
社長は立ち上がり私をソファーに誘導する。
「単刀直入に言うけど…ゆうの事秘書としてではなく女として好意を持ってる。既婚者であるのはもちろん分かってるし、俺の立場でこんな事言っちゃいけないのも分かってる。19歳のゆうと出会った時から俺はずっと好きなんだ。今まで言えなかったけど…手遅れなのになんで俺こんなタイミングで言うんだろうな…ごめん、迷惑だよな…」
その瞬間、豊以外の男性に久々に胸がときめいてしまった。
好意を持ってくれていたことに対しては、指名で来てくれていた訳だからずっと感じてはいた。
だけれど“好き”とハッキリ言われることは一生ないだろう。と思っていたのに。
なんだろう…この感情は…。
旦那の豊は、甘えたがりで褒められたいタイプ。浮気など絶対になくて仕事が終わったら寄り道せずに帰って来る。
その真面目さというか男らしさが欠けている部分に少し嫌に思っていたのは事実。
言いたいことを言えず、ただお互い相手に合わせているだけで、その分衝突も少ないけれど豊との距離は近いようで遠い。
それでも当たり前に豊の事は愛している。
それなのに…
帰宅しても密かに社長の事が気になっている自分もいた。
社長は豊とは全くの正反対。
常に男らしくて余計なことは口にしない。接待でナイトクラブに行ったりもする。
私はその話を聞くのが楽しく感じていた。
私たちが知り合ったのはそもそもキャバクラなのだから。
なぜだろう…
嫉妬するとかはないけれど私も社長の事が気になる。
私は人妻だから逆に都合が良かったのかもしれない。
ある程度の遊びをしている人の方が自分との距離を保てる気がして不倫には都合が良かったんだ。
「岩崎さん、明日から入社ね」
「っえ!…てことは…」
「うん!明日から正式に俺の秘書としてよろしくね」
そう言って社長が手を差し出した。
「女性に対して男性の方から握手を求めるのは失礼にあたります」
「よし!合格」
瞬時に私を試してくる社長はとても頭が切れる人だ。
私は秘書として認めてもらえた気がして気持ちが高ぶった。
これからが本番だと今一度意気込み、心を弾ませながら帰宅をする。
「ただいまー」
「おかえり、なんか元気だね?」
「明日から入社だってー!!」
豊に満面の笑みを見せた。
「まじかっ!おめでとう!嫁が秘書とか自慢もんだな」
「私、頑張るから」
「おう!応援する」
それから、入社して1ヶ月間は毎日が不安と緊張で頭がおかしくなりそうだった。
そんなガチガチな私に社長と社員さん達が全面的にサポートをしてくれたお陰で、心強く仕事に専念することができた。
ある日、社内で女性社員と鉢合わせし、
「あっ!社長。お疲れ様です。今日も相変わらず素敵ですね」
と、甘ったるい声で上目遣い。
この人はきっと、社長に好意を寄せているな。
女の勘ってやつ。
「ありがとう。君も素敵だよ」と、返されまんざらでもない顔をしている。
「あ、ありがとうございます。新しい秘書さんですか?可愛いですね」
「だろ?俺の秘書は厳選しないとだからな」
そう言って、女性社員をはぐらかし、さも悔しそうな顔をして女性社員はその場を後にした。
なぜか勝手に勝ち誇った気分になった。
「じゃ俺は会議行くけど多分少し長引くと思うから、13時に坂本社長がお見えになったらお待ちいただいて」
「かしこまりました。気を付けて行ってらっしゃいませ」
社長をお見送りして秘書室に戻ろうとした時、背後からとんとんと肩を叩かれ、私は振り返る。
さっきの社員さんだ。
えっ!なんか、顔が怖いんですけど…
「ど、どうされました?」
「あんたさ、どこの女か知らないけど社長に手出さないでね」と、怒気をこめた声で言われ、その瞬間、高校時代の言葉がフラッシュバックする…
“熊沢さーん!私の彼氏取らないでねー?親が親なら子も子で心配だからー。ほんと汚らわしい”
目の前が一瞬真っ暗になり私は過呼吸になってその場にしゃがみこんだ。
「っえ!な、なに?大げさなんだけど…」
ッドン!!!!
立ちすくんでいる女性社員を払いどけて誰かが私の背中を擦る。
擦っててくれたおかげですぐに落ち着きを取り戻し、「すいません、ありが…」と言いながら顔を上げると、
「っ社長!!!」
いるはずのない社長を目の前に驚きを隠せない。
「会議は…」
「そんなことはいいから…立てるか?」
「あ、はい」
社長に支えてもらいながら立ち上がる。
「あの…私…なにもしてないですよ…」
この光景に焦る女性社員。
そんな女性社員を見向きもせずに社長は私を秘書室へと連れて行ってくれた。
秘書室に着いてソファーに腰掛けると、社長がお茶を出しながら、「大丈夫か?」と、私の顔を覗き込んだ。
「すみません、ありがとうございます。ちょっと疲れちゃったのかな…」
そう言いいながら苦笑いを浮かべ首を傾げて見せた。
「ああゆうことよくあるの?」
「いえいえ、初めてです。心配なさらず」
社長は睨みつけるかのような真剣な目で私を見つめる。
「本当ですよ。それより会議遅れますよ!」
「今日の会議は出なくても大丈夫だから。そんなことより、さっきの子かなり気が強いから気を付けてね」
私の事を心配してくれてるんだ…。きっと、こうなるって予測して戻ってきてくれたんだね。
「っごめんなさい…」
「なんで謝るんだよ。大事な会議じゃないって言ってるだろ」
「…」
「とりあえず、13時に坂本社長が来るからそれまではゆっくり休んでて」
こんなことで迷惑を掛けてしまうなんて…。大事な会議のはずなのに。
過去にとらわれている自分が情けなかった。
それからというもの、社長は今まで以上に私に気を配るようになった。
そして、入社から3ヶ月が経とうとしていた時、仕事を終えいつものように社長に挨拶をし、帰る支度を始めていた。
「ゆう!ゆうに話があるんだけど、少し時間大丈夫?」
それは突然の事で久し振りに名前で呼ばれ、心がざわついた。
私は社長のデスクの前に立つ。
「どうかされましたか?」
社長は立ち上がり私をソファーに誘導する。
「単刀直入に言うけど…ゆうの事秘書としてではなく女として好意を持ってる。既婚者であるのはもちろん分かってるし、俺の立場でこんな事言っちゃいけないのも分かってる。19歳のゆうと出会った時から俺はずっと好きなんだ。今まで言えなかったけど…手遅れなのになんで俺こんなタイミングで言うんだろうな…ごめん、迷惑だよな…」
その瞬間、豊以外の男性に久々に胸がときめいてしまった。
好意を持ってくれていたことに対しては、指名で来てくれていた訳だからずっと感じてはいた。
だけれど“好き”とハッキリ言われることは一生ないだろう。と思っていたのに。
なんだろう…この感情は…。
旦那の豊は、甘えたがりで褒められたいタイプ。浮気など絶対になくて仕事が終わったら寄り道せずに帰って来る。
その真面目さというか男らしさが欠けている部分に少し嫌に思っていたのは事実。
言いたいことを言えず、ただお互い相手に合わせているだけで、その分衝突も少ないけれど豊との距離は近いようで遠い。
それでも当たり前に豊の事は愛している。
それなのに…
帰宅しても密かに社長の事が気になっている自分もいた。
社長は豊とは全くの正反対。
常に男らしくて余計なことは口にしない。接待でナイトクラブに行ったりもする。
私はその話を聞くのが楽しく感じていた。
私たちが知り合ったのはそもそもキャバクラなのだから。
なぜだろう…
嫉妬するとかはないけれど私も社長の事が気になる。
私は人妻だから逆に都合が良かったのかもしれない。
ある程度の遊びをしている人の方が自分との距離を保てる気がして不倫には都合が良かったんだ。



