「ふたりともお疲れ~。休憩?」
「そうそう、ちょうど村田と一緒になってさ」

村田っていうのは花凛のことね。同期は100人近くいるけど、仲が良いのは研修なんかで一緒だった数人だ。佐橋くんは私たちと同じ研修グループだった。

「里乃子が調子いいって話よ。よかったねえ」

花凛の言葉に佐橋くんが乗っかる。

「あ、俺も聞いたよ。行永、榛名さんについてかなり頑張ってるって。おまえ、のんびり屋だから心配してたんだけど、よかったなあ。周りはちゃんと努力を見てるよ」
「我慢した甲斐あるじゃなーい」

花凛がにやにや言う。

「我慢?」
「里乃子、榛名さんと付き合ってるのよ」

かほが苦笑いで付け足した。

「里乃子ってば、見た目よりしたたかだよね。榛名さんに告白されて、付き合えば自分に甘くなるだろうってOKしたんだから」
「めちゃくちゃビビりながら、我慢してお付き合いしてたんだよね。結果、手玉に取って自分の評価あげてんだもん」
「どうせすぐ終わる恋だから思い出に、とか言っておいて、垂らし込んでさ。怖いわあ」

かほと花凛の悪気はないけど、口さがない言葉に怒りがこみあげてくる。
確かに最初はそんな下心がなかったわけじゃない。
だけど、今は違う。
私は榛名先輩が好きで一緒にいたいと思うように変わり始めた。一ヶ月前とは気持ちが大きく違う。